兄の食トレを8年間見た栄養士の私が感じたアスリートの食を支えるという原点と挑戦
こんにちは!スポーツ専門栄養士の小林彩乃です。
現在、スポーツ専門栄養士として欧州リーグに挑戦するサッカー選手の海外帯同を直前に控えています。
選手が人生をかけて挑む「海外挑戦」という大きな舞台に、 専属栄養士という形で伴走し、日々の食からパフォーマンスを支える準備を進めています。
私たち、スポーツ分野を専門とする栄養士は、栄養セミナー、合宿帯同、調理サポートをしています。
今回はその中で、スポーツ専門栄養士の私がどんな活動をしているのか。
そしてどんな想いで現場に立ち続けているのかを、アスリートの皆さんやご家族、そして読んでくださる皆様に知っていただけたらと思います。
まだ「専業栄養士をつける」という選択肢はそこまで一般的ではありません。
だからこそアスリートの皆さんには、食生活を安心して任せられる存在として、栄養士の帯同が身近な選択肢としてイメージしていただければ、何より嬉しいです。
それから、将来プロを目指しているジュニア選手や、日々サポートに奮闘されているご家族の方にも、日々の練習と同じくらい「資本となる身体を作ること」の大切さが伝われば幸いです。
この記事が、食事の重要性や栄養士の価値を少しでも身近に 感じてもらうきっかけになればと思っています。
まずは、私のすべての原点である、サッカー選手として戦う兄と我が家の食卓についてお話しさせていただきます。
私が間近で見てきたプロサッカー選手としての1つの正解

全国から精鋭が集まる Jクラブユースのメンバーの中で、兄は決して目立つ選手ではありませんでした。
恵まれたフィジカルやスピード、天才的なセンスがあったわけでもありません。
兄は「やるべきこと」を徹底して毎日欠かさず継続する選手でした。
兄の幼少期と食事

甘党でかなりの偏食家、線の細い兄。
当時の我が家の食卓は、まるで静かな戦場でした。
炊飯器の横には常に計量器があり、こっそり減らそうものなら父に「あと50gいけるだろ」と白米を追加され顔を青ざめさせる日常。
毎晩フレンチのコースかと思うほど長い時間をかけ、
おかず約8品と計量されたごはん、汁物、ヨーグルトや果物に向き合っていました。
母も料理本を買ったり講習に参加したりして上達し、いつしか家庭の食卓とは明らかに違う「我が家のフルコース」が並ぶようになりました。
皮肉にも妹の私のほうが昔からよく食べ吸収も良く、兄が一番欲しかったであろう身長や体格を私が持っていたため、羨ましかったと思います。
時間も、思考も、体力も、持てるすべてをサッカー選手になるために捧げる兄の姿。
私は、兄のことを子供ながらに「普通じゃない」と感じていました。
そんな時、変化は静かに訪れました。
中学3年で兄の試合を見た時、ピッチの上で圧倒的な対人の強さを発揮していたのです。
食トレを始めて約8年、兄は初めて年代別の日本代表に招集されました。
その時、「これが世界で戦える身体を作るということなのか」と腑に落ちました。
兄は、世界と戦うための体をつくるため、日々の食事の中で、1グラムずつ着実につみあげていきました。そんな兄の背中を見て、当時の私は、「アスリートを食事で支えたい」と強く感じました。
これまでの活動と経験について

そして将来の方向性を決めた高校1年生の夏。
トップクラスの選手を支える食の専門家にお話を伺い、
「まずは、選手に信用してもらえるように国家資格である管理栄養士の資格を取ろう」と決め、 大学に進学しました。
大学の授業で学ぶ化学や臨床の知識は大切ですが、「このまま大学の授業を受けているだけでは足りない」と痛感しました。
我が家の食卓やグラウンドで必要だと感じた スポーツ栄養をもっと身につけたい一心で、
サッカークラブチームの下部組織の寮にあるキッチンに入り、アルバイト期間3年と社会人1年目までの約4年間お世話になりました。
大学時代、学びを深めるために飛び込んだ「サッカー寮」での4年間

寮での食事は、決められた時間内に仕上げる効率的な立ち回りや調理スピードが必要でした。
それに加えて、寮にいたパートの方々の丁寧な技術や主婦の知恵にはすぐに追いつくことができず、自分の力不足を痛感させられる毎日でした。
一方で、選手たちが寮のご飯を食べた反応を直接受け取れたことは、私にとっては大きな財産でした。
「梅干しのような酸っぱいものが苦手、だけどマリネは甘めにすれば食べる」
「納豆はアレンジするよりそのままがいい」
といった、ユース世代のリアルな好みを体感として知ることができました。
寮という環境だからこそ、もっと選手たちに「食の知識」を伝える栄養教育の場を作ってあげたかった。しかし、日々の厨房を回すことに精一杯で、そこまで手を広げきれなかったもどかしさや悔しさも心に残っています。
ロストバゲージ――制限があったからこそ得た「創り出す力」
大学3年生の春。ついにスコットランドでプレーを始めた兄の元へ食事サポートをすることになりました。初めての一人海外。そこではハプニングの連続でした。
到着早々、飛行機に乗る時に空港で預けた荷物が行方不明になり、私のスーツケースが中継地点に置き去りにされてしまったのです。
そこには私の服やコンタクトはもちろん、選手を支えるための「私の勝負道具」である調味料や備品など、すべてが詰まっていました。
いつ荷物が届くかわからない状況の中、「持ってきたものは手元にないもの」として腹を括り、すぐに気持ちを切り替え、現地のスーパーを回って代用品を探しました。
日本の繊細な調味料がないからこそ、海鮮自体の旨味を生かしたり、レモンや香辛料を効かせてシンプルながらもパンチのある味付けにしたりと、飽きがこない工夫をしました。
このトラブルを経て得たのは、「あるもので工夫して創り出す力」と、「臨機応変な対応」です。
料理において「制限があるからこそ、逆に深みを追求できて新しい領域が広がる」ということを身をもって学びました。
合宿帯同から、新しいサポートのカタチ「キッチンセッション」まで

その後も、バレーボールの強豪校の合宿帯同では、約70人分の食事を設計から提供のすべてを行ったり、プロの若手選手や大学生に対して、オンラインで手元を映し一緒に料理を作りながら、
ヒアリングやメニューのアレンジ方法を伝える「キッチンセッション」という新たなサポートの形にも挑戦したりしました。
さらに、高校での栄養の特別授業や、総勢100名の強豪野球部へ向けた栄養セミナーなど、個人サポートだけでなく大人数へ「食のポイント」を伝える活動にも取り組みました。
極寒のポーランドへ。積み重ねが自信に変わった日

そして今年に入り、二度目となる兄の海外サポートへ。
その場所は、極寒のポーランド。
時には-17℃に達する日もあり、肌を出していると鋭い冷気が突き刺さるようでした。
約3年ぶりのサポート。
久しぶりに兄に料理を出すのは少し緊張もありましたが、
「味付けも、手際も、前よりずっとレベルが上がったね」
と、たくさんの嬉しい言葉を貰いました。
現場で鍛えられた手際や料理の引き出しが、
この3年間で自分が重ねてきた歩みが、
しっかりと成長に繋がっていたのだと深く実感できた期間でした。
これから

そして現在、専属の栄養士として新たに選手をサポートすることになりました。
これまでの経験を生かし、海外で戦う選手を支えること。
そして、海外では食事は孤独を感じないように、
慣れ親しんだ日本食をいかに再現できるかという想いでサポートをします。
なにより、いつでもベストコンディションで一試合一試合乗り切れるように、
数値だけにこだわらず、その選手に合った方法を模索し続けていきたいと思います。
そうした食を通じた心の満たされ方こそが、特にストレスの多い海外という過酷な環境において、選手が日々戦い抜くための大きなエネルギーになると思っています。
アスリートにとって、海外で戦うということは人生をかけた大きな大きな挑戦です 。
海外でのサポートに不安がないわけではありませんが、それよりも、
そこに専属栄養士という形で伴走できることへの責任感からくる緊張感のほうが大きいです。
“自ら手がけた料理が、選手の身体を作る” そこに数値だけでなく、彼らのリアルな反応も大切にしていきたいと感じております。
食事サポートのその先に選手たちが活躍する姿を想像すると、武者震いのような高揚感を感じています。
私の変わらないスローガンである「美味しい料理で栄養管理ができる管理栄養士」をどんな場所にいても体現できるようにしていきたいと思います。
そして、プロを目指す若い選手から、世界の第一線で戦うトップアスリート、一人でも多くのアスリートが自分の力を持てあますことなくすべて発揮できるようにしてもらいたいと心から願っています。
選手が戦いきれる身体を、選手にとって一番いい方法でサポートしていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました !
~(一社)食共育推進協会(SHOKUTOMO)~
一般社団法人食共育推進協会は、ジュニアからプロまで、あらゆる競技レベルのアスリートを支えるスポーツ専門栄養士のチームです。
「食を通じてアスリートの可能性を広げたい」という想いのもと、これまで200名を超える規模のジュニア向け栄養セミナーを重ねてきたほか、専属シェフによる食事サポートサービスも提供してきました。
私たちは競技特性やトレーニング内容、試合日程、身体状況に合わせて献立を設計し、食材の調達から調理・提供、遠征先での食環境づくりまでを、専属シェフと管理栄養士がチームで一貫してサポートします。衛生管理も徹底しているため、選手は食事の心配をすることなく、競技に集中できる環境を実現しています。
[ 一般社団法人食共育推進協会 Instagramアカウント ]
~ブログ作成者~
一般社団法人食共育推進協会 小林彩乃
プロサッカー選手になった兄をきっかけに、スポーツ専門栄養士を目指し、海外への食事サポートを実現。
「美味しい料理で栄養管理ができる管理栄養士」というスローガンをもとに、アスリートへの食事サポートを支援します。
[ サポート実績 ]
◇プロサッカー選手の海外での食事作り
▶︎ヨーロッパで2週間サポート2024
▶︎ ヨーロッパで2週間サポート2026
◇私立高校の授業で栄養講義
◇総勢100名の強豪野球部へ向けた栄養セミナー
◇高校生男子バレーボールチームの合宿帯同
◇プロの若手選手に向けたオンライン調理サポート
[ 小林彩乃Instagramアカウント ]
@athlete_sis_gohan
~監修~
一般社団法人食共育推進協会 理事 二階堂なの


