朝食抜きは危険!熱中症を防ぐ現場の食事と栄養対策
朝は何も食べていません―その行動が、現場での熱中症リスクを高めているかもしれません。水分補給やWBGTの活用が浸透しつつあるなかで、見落とされがちなのが“食習慣”です。特に朝食の欠食は、脱水や電解質不足、集中力の低下などを引き起こし、現場での重大事故や労働災害につながりかねないです。本記事では、国のガイドラインや現場の実践知をもとに、「朝食抜きのリスク」と「すぐできる補食対策」を、企業の安全衛生担当者・総務部門に向けて解説します。
朝食抜きが招く、見えにくい熱中症リスク

作業前の体調確認として、「朝食をとったかどうか」は重要なチェック項目です。欠食の状態では以下のようなリスクが高まります。
- 体内水分・塩分・糖分の不足
→ 脱水状態、熱疲労や熱けいれんの誘発 - 体温調節機能の低下
→ エネルギー不足により汗をかきにくくなり、体温上昇が抑えられない - 集中力や判断力の低下
→ 初期症状(めまい・倦怠感)を見逃しやすくなり、事故や重症化の原因に
さらに、寝不足や飲酒明けの状態が重なると、リスクは一層高まります。「暑さ」だけでなく、「体調不良」が熱中症の誘因であることを、現場全体で理解しておく必要があります。
食事から始める熱中症対策:「1日3食」が基本
通常の食生活でも、3食をしっかり摂れば必要な塩分・水分・エネルギーは補えます。特に朝食は、以下の栄養素を意識して摂ることが大切です。

「食べること」はその日の安全をつくる行為です。とくに朝食は、「命を守る前準備」と言っても過言ではありません。
朝食を抜いて出勤してきた人への対応策:現場で用意できる補食と飲料
「朝は食べていません…」
そんな作業者が出勤してきたとき、どう対応するかは、安全衛生の大切なポイントです
朝食を抜いた状態では、エネルギーや水分、塩分が不足し、熱中症だけでなく、集中力の低下や判断ミスなどによる事故リスクも高まります。そのまま作業に入るのは避け、補食と水分をとるよう促すことが望ましい対応です。
【 すぐにとれる補食の例(コンビニでも入手可能)】
・バナナ
糖質・カリウム・マグネシウムを含み、すばやくエネルギーを補給できる定番の補食。
・エネルギーゼリー
手を汚さずに摂取でき、糖質と少量の水分・電解質をまとめて補える。
・ヨーグルト飲料/豆乳飲料
糖質とたんぱく質の両方を補え、持続的なエネルギー源に。食欲がない朝にも飲みやすい。
・野菜ジュース・スムージー
ビタミンやミネラルが補え、体調を整えるサポートに。甘みがあるタイプは糖質補給にも◎。
➡ 作業開始の15〜30分前に摂るのが理想的です。
【補食をサポートする水分・電解質補給も忘れずに】
補食とあわせて、水分や塩分の補給も重要です。特に、朝食を抜いた場合は水分も不足していることが多いため、こまめな水分補給を促しましょう。
- スポーツドリンク:糖分とナトリウムを含み、発汗量が多い現場での水分補給に適しています。
- 塩飴(+水):ナトリウム補給に有効ですが、必ず水分とセットで摂取することが必要です。
「何も口にしていないままの作業はNG」
この原則を現場全体で共有しておくことで、熱中症や事故のリスクを確実に下げることができます。
食習慣から始める職場の安全文化づくり
「食べること」への配慮は、熱中症対策としてだけでなく、企業の安全文化の一部として根づかせる必要があります。以下のような取り組みが効果的です。
- 就業前体調チェックに「朝食の有無」を追加する
- 休憩所・更衣室に補食や飲料を常備(塩飴、ゼリー等)
- 社内報・掲示で「朝食の重要性」を継続的に周知
- 朝礼での声かけルール化:「朝食食べた?」「水分とった?」
小さな行動の積み重ねが、職場の安全と従業員の命を守ります。
朝食は“命を守る一食”という意識を
熱中症は「外気温」だけではなく、「個々の体調と習慣」に大きく左右されます。中でも朝食は、体を熱環境に備えさせる“起動スイッチ”のような存在です。
企業として、食事への意識を高め、補食の仕組みを整えることは、安全配慮義務の一環であり、信頼される職場づくりにも直結します。
今こそ、「朝食から始める熱中症対策」を組織全体で実践していきましょう。