【知らないと危険】経口補水液とスポーツドリンクの違い!熱中症対策の正しい水分補給
「とりあえずスポーツドリンクを飲めば大丈夫」―そんな感覚で熱中症対策をしていませんか?
実は、経口補水液とスポーツドリンクでは、その役割と効果がまったく異なります。
正しい水分補給を知らずに現場で対応を誤れば、最悪の場合、命に関わる事態にも。
この記事では、働く人の命を守るために、安全衛生管理者・総務担当者が知っておくべき「熱中症対策における水分補給の基本と実践」についてお伝えします。
経口補水液とスポーツドリンクの違いとは?
電解質と糖分のバランスが決定的に違う

飲料ごとに成分バランスは大きく異なります。スポーツドリンクは糖分とカロリーが高く、軽作業時のエネルギー補給や一時的な水分補給に適していますが、塩分(電解質)は控えめです。一方、経口補水液はナトリウム含有量が倍以上で、脱水症状や熱中症初期の補給に特化しています。
経口補水液が「命を守る場面」とは?
経口補水液は、以下のような状況で優先的に選ばれるべきです:
- 初期の脱水症状(口の渇き、めまい、頭痛など)
- 激しい発汗後(大量の電解質喪失)
- WBGT 31℃以上の高温環境での作業
- 熱中症からの回復期(水分・塩分の再補給)
経口補水液はあくまで脱水症状が見られるときや、激しい発汗が続く場面での“対処的な飲料”です。日常的に摂取するものではなく、状況に応じて使い分けることが重要です。また、塩分含有量が高いため、製品に記載された摂取量の目安を守ることも忘れてはなりません。
水分補給の選び方と使い分け
- 弱い発汗(軽作業・休憩中):基本は「水」でOK
- 中程度の発汗:スポーツドリンクで電解質と糖分を補給
- 激しい発汗:経口補水液も活用し、脱水対策を強化
- 熱中症初期、回復期:経口補水液
現場では、作業負荷とWBGT指数をもとに判断し、適切な飲料を支給・設置することが重要です。
理想的な水分補給のタイミングと量

人の体は、一度に大量の水分を摂るよりも、少量ずつ頻繁に補給するほうが効率的に吸収されます。また、のどが渇いた時点で、体はすでに脱水状態にあるとされており、常に先回りした水分補給が鍵となります。
冷たい飲料の方が吸収が早い
飲料の適温は「5〜15℃」とされており、常温よりも吸収が早くなります。現場にはクーラーボックスを設置し、常に冷えた飲料が確保できる体制を整えましょう。
参考文献:Costill, D. L., & Saltin, B. (1974). Fluid ingestion during distance running. *Archives of Environmental Health*, 28(6), 300–304.
正しい選択が命を守る
熱中症対策で大切なのは、「何を飲めばいいか」ではなく、「どの場面で何を選ぶべきか」という判断です。スポーツドリンクは、軽〜中程度の発汗時に手軽に水分・塩分・エネルギーを補給できる利便性があります。一方で、発汗量が多く、脱水リスクが高まる状況や熱中症の初期や回復期には、経口補水液が有効です。
つまり、どちらか一方が「正解」なのではなく、現場のWBGT値や作業負荷、作業者の体調に応じて最適な飲料を選び、タイミングよく補給することが、命を守る熱中症対策の基本なのです。