重症化を防ぐ!熱中症初期症状の早期発見と応急処置

猛暑が続く中、労働災害の一因として深刻化しているのが「熱中症」です。特に建設や製造などの現場では、異変に気づくタイミングが遅れると命に関わる事態にもなりかねません。現場で発生する熱中症は、初期段階での“気づき”と“適切な応急処置”によって重症化を防ぐことが可能です。本記事では、現場で今すぐ実践できる熱中症対策として、初期症状と正しい応急処置について解説します。


「あれ、ちょっと変かも?」──初期症状に気づくポイント

熱中症の兆候は、「何となく体調が悪い」といったあいまいな感覚から始まります。以下のような症状が見られたら、まずは熱中症の可能性を疑う必要があります。

これらは熱中症の初期症状であり、適切な処置をすれば回復が見込める段階です。本人が自覚しにくいことも多いため、周囲が小さな異変に気づき、声をかけることが重要です。


応急処置の基本は「冷却と水分補給」

初期症状が認められた場合、以下の応急処置をただちに行います。

涼しい場所に移動させる

屋外であれば日陰や冷房の効いた室内など、可能な限り気温が低く、風通しの良い場所へ避難させます。

衣類をゆるめて身体を冷却

作業着のボタンを外し、うちわや送風機で風を当てます。また、首や脇の下、脚の付け根など太い血管が通る部位に氷や冷却パックを当てて身体を冷却します。

水分と塩分の補給

意識がはっきりしていて自力で飲める場合には、経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつ補給します。水だけでなく、塩分の同時補給が重要です。



救急車を呼ぶべきケース──判断を迷わないために

以下のいずれかに該当する場合は、迷わず119番通報してください。

  • 意識がない、あるいは呼びかけに反応しない
  • 水分を自力で摂取できない
  • 応急処置を行っても症状が改善しない

救急車の到着を待つ間も、冷却処置を継続し、体温の上昇を防ぎます。過去の事例では、「まだ様子を見よう」と判断を先延ばしにしたことが命取りになったケースも報告されています。



現場対応力を高める体制づくりとは?

個々の応急対応力だけでなく、組織全体で以下のような体制を整備しておくことが望まれます。

  • 全作業者への初期症状教育と訓練
  • 単独作業の回避と見守り体制の構築
  • WBGT値の常時モニタリングと作業中止基準の設定
  • 「救急対応の手順書」と応急処置キットの現場常備

また、熱中症発生時の報告ルートの明確化や、周囲の作業者が“異変に声をかける勇気”を持てる職場づくりも重要な対策です。



初期対応で救える命がある

熱中症は、事前の予防策だけでなく、初動対応の正確さが命運を分けます。現場で「あれ?」と感じたときにすぐ行動できる体制を、今こそ整備しましょう。安全衛生の責任を担う皆様が現場に対して適切な教育と支援を行うことで、多くの命が守られます。