【冷房の罠】エアコン完備でも安心できない?職場に潜む“隠れ熱中症”リスクと対策法

「うちは冷房が効いてるから大丈夫」──そう思い込んでいませんか?
実は、オフィスや厨房、冷凍倉庫などエアコンのある職場でも、熱中症が発生していることをご存じでしょうか。室内にいながら体調を崩し、最悪の場合は救急搬送されるケースも少なくありません。
本記事では、冷房環境下でも見逃されがちな“隠れ熱中症”のメカニズムと、現場で実践できる予防策を徹底解説します。2025年以降、企業が責任を問われるリスクも高まる中、安全衛生管理者や総務担当者が今すぐ知っておくべき内容をまとめました。


冷房完備=安全とは限らない!“隠れ熱中症”が起きる理由とは?

熱中症というと、炎天下の建設現場や夏の屋外イベントを思い浮かべがちです。しかし実際には、屋内かつ冷房のある職場でも熱中症のリスクは十分に存在します。

厚生労働省の報告によれば、厨房やビル清掃、冷凍倉庫などでの熱中症発生例が数多く確認されています。これは、冷房があっても以下のような要因が重なると、体温調整がうまくできなくなるためです。

  • 冷房の効きが不均一で局所的に高温多湿になる
  • 長時間の立ち作業や防護服の着用により体内に熱がこもる
  • 冷房で“のどの渇き”を感じにくくなり、水分補給が疎かになる
  • トイレに行きづらい、業務中に飲水できない環境がある

これらは、典型的な“隠れ脱水”や“慢性熱中症”の引き金になります。


室内熱中症の見落としポイント──現場で実際に起きている事例

以下のような現場で熱中症が頻発しています。

■ 調理場(厨房)

グリスフィルターの詰まりで換気が効かず、輻射熱が充満。コックコートが熱をこもらせ、熱中症の初期症状に気づきにくい状況に。

■ ビル清掃・夜間作業

空調が停止した高層階や閉鎖空間での作業中、高温多湿かつ単独作業というリスクが重なるケースが多数。声かけができない環境も要注意です。

■ 冷蔵・冷凍倉庫

外気との気温差が激しく、体温調整機能が乱れることで夏バテ・脱水に。特に一気に水分をとってしまうと腹痛や体調不良の原因になります。

冷房があっても、「熱源のある空間」「服装の制約」「休憩・水分補給の制限」があれば、それは高リスク職場と言えます。


普段からの対策が命を守る──企業が取るべき5つの基本行動

  1. 熱中症警戒アラートの定期確認
     前日夕方・当日朝の情報を基に、作業の中止・時間変更の判断材料に。
  2. 現場環境の見直しと設備投資
     遮熱シート、ファン付き作業服、ドリンクサーバーの設置など、設備面からの支援を。
  3. 水分・塩分補給の習慣化
     のどが渇く前に補給する意識を定着させる。冷房下でも定期的な飲水を促す声かけが重要。
  4. 休憩時間の見える化と柔軟運用
     作業時間帯とWBGT指数に応じて、休憩サイクルを調整。「移動時間=休憩時間」ではないことも認識を。
  5. 暑熱順化の教育と実践
     連休明けや新入社員への対応として、「汗をかく」習慣を意識的に取り入れることが、長期的なリスク回避につながります。




冷房があるから安心、は“思い込み”です

熱中症は「暑さ」だけでなく、「環境」「服装」「休憩」「体調」の複合要因で発生します。冷房の効いた室内でも、油断すれば重大事故につながることを、私たちは認識しなければなりません。

職場の安心は、日々の地道な対策と仕組みづくりから。
「隠れ熱中症ゼロ」の職場を目指し、今できる一歩を踏み出しましょう。